渡韓すると、「免税」という言葉を一日のうちに何度も見かけます。空港の案内、街なかの看板、クリニックの価格表の隅、そして会計のときに渡される明細。どれも同じ「免税」に見えるのですが、実は指しているものが違います。
ここが混乱のもとになっています。日本語では一語にまとまってしまう言葉が、韓国語では別々の言葉に分かれているからです。買い物の場面で使われる言葉と、医療費の課税について使われる言葉と、あとから戻ってくるお金について使われる言葉は、韓国語ではそれぞれ違う単語になっています。日本語の案内だけを読んでいると、この違いが見えません。
この記事では、渡韓の旅程を順にたどりながら、どの場面でどの表記に出会うのか、そしてその場で何を確認すればよいのかを整理します。制度そのものの解説ではなく、目の前の表示をどう読むかという実務の話です。なお、買い物にともなう免税や還付は医療とは別の制度にもとづくもので、条件や手続きは購入した店舗や空港の案内でご確認ください。この記事では医療の場面に絞ります。

韓国語では、三つの別々の言葉に分かれています
まず、旅程のなかで実際に目にする表記を並べます。読み方も一緒に載せておきますので、看板や画面で見かけたときに照らし合わせてみてください。
| 韓国語の表記 | 読み方 | 日本語での意味 | 主に出会う場面 |
|---|---|---|---|
| 면세 | ミョンセ | 免税 | 空港や街の免税店の看板、買い物の案内 |
| 비과세 | ピグァセ | 非課税 | 医療費のうち、税がかからないものの説明 |
| 부가가치세 | プガガチセ | 付加価値税 | 価格表、明細、条文 |
| 부가세 별도 | プガセ ピョルト | 付加価値税は別 | クリニックの価格表の注記 |
| 부가세 포함 | プガセ ポハム | 付加価値税を含む | クリニックの価格表の注記 |
| 환급 | ファングプ | 還付、払い戻し | 外国人観光客向けの案内 |
この表のうち、渡韓して美容医療を受ける方にとっていちばん大事なのは4行目と5行目です。価格表に「부가세 별도」と書いてあれば、表示されている数字に税が乗ります。「부가세 포함」であれば、その数字が支払う金額です。ここだけでも見分けられるようになると、当日の会計でずれが出ません。
場面① 空港と街で見る「면세」
到着してすぐ、空港でこの表記に出会います。街の大きな建物にも同じ表示が出ています。ここで使われている「면세」は、買い物に関する話です。
医療とは別の制度にもとづくものですので、クリニックでの支払いとは切り離して考えてください。 買い物のほうで手続きをした経験があると、医療でも同じようにできるはずだと考えてしまいがちですが、根拠になる規定が違います。混ざりやすいのはこの二つですので、旅程の最初の段階で頭のなかを分けておくと、あとが楽になります。
場面② クリニックの価格表で見る税の表示
次に出会うのが、クリニックの価格表です。ここで確認するのは「免税かどうか」ではなく、表示されている数字に税が含まれているかどうかです。
前提として、韓国では美容を目的とした施術は課税の対象として扱われています。付加価値税法施行令の第35条には、対象になる施術の名前が具体的に並んでいます。

黄色く示された部分に並んでいるのが、条文に名指しで挙げられている施術です。肌管理として受けることの多いものが、ここにそのまま入っています。つまり、美容目的で受ける施術には税がかかるという前提から出発することになります。
そのうえで、価格表の表示は店ごとに違います。税込みで書いてあるところもあれば、税別で書いてあるところもあります。どちらが正しいという話ではなく、書き方が統一されていないというだけのことです。ですので、価格表を見た段階で次の一言を用意しておいてください。
「この金額は付加価値税を含みますか」
どの施術が課税の対象として条文に並んでいるかは、条文に並ぶ施術名を一つずつ確認した記事に整理しています。
場面③ 案内文で見る「환급」
三つめが、外国人観光客向けの還付についての案内です。日本語で書かれた案内記事や、クリニックの掲示のなかに出てくることがあります。
これについては、韓国の租税特例制限法という法律の第107条の3に定めがあります。条文の原文を確認しました。

黄色く示した部分が期限で、「2025年12月31日まで」と書かれています。2026年8月31日時点で確認できる最新の条文にも、それ以上の延長の規定は見当たりません。
ここで大切なのは、「廃止された」のではなく「延長されていない」状態だという点です。条文そのものは法律に残っています。この制度は過去に複数回、期限が来るたびに延長されてきた経緯があるものですので、今後どうなるかは現時点では分かりません。詳しい経緯は条文の原文にあたって確認した記事にまとめています。
したがって、還付を前提に予算を組むことは、いまはできない状態です。案内文でこの表記を見かけたら、その案内がいつ書かれたものかを確かめてください。
場面④ 会計のときに、実際に確認すること
最後が会計です。ここまでの三つを踏まえると、会計の場で確認することは次の三つに絞られます。
- カウンセリングで決まった内容と、明細に並んでいる項目が一致しているか
- 表示価格に税が含まれていたのか、別に加算されているのか
- 明細書と領収書を受け取ったか
三つめは、その場では必要に思えなくても必ず受け取ってください。あとから内訳を確認したいとき、手元に何もないと調べようがありません。支払いの手段ごとに何が記録として残るのかは、支払い方法と記録の残り方をまとめた記事に整理しています。
会計の場で日本語が通じるかどうかは、クリニックによって差があります。実際の口コミには、この点についての声が数多く見られます。
「日本語が上手なスタッフもいるので終了時間まですごくスムーズに安心して過ごすことができました。」
「終了時間まで」というところが大事です。カウンセリングだけ日本語で、会計は別のスタッフが対応するという場合もあります。
旅程の順に並べると、こうなります
ここまでの内容を、一日の流れに沿って一つの表にまとめます。
| 場面 | 見かける表記 | その場で確認すること |
|---|---|---|
| 空港・街 | 면세 | 医療とは別の制度です。切り離して考えます |
| 予約・問い合わせ | 부가세 포함/별도 | 表示価格に税が含まれるかを先に聞いておきます |
| カウンセリング | 견적(見積もり) | 今日受ける内容と、その総額を数字で確認します |
| 会計 | 부가가치세 | 明細の項目と、税の扱いを確認します |
| 案内文・掲示 | 환급 | 書かれた時期を確認します。条文上の期限は切れています |
| 帰国前 | 영수증(領収書) | 明細書と領収書が手元にあるかを確認します |
この表を出発前に一度見ておくだけで、現地で表記に出会ったときに立ち止まらずに済みます。
「税込みかどうか」と「総額かどうか」は、別の話です
ここでよくある行き違いを一つ挙げておきます。「税込みです」と言われたので総額だと思っていたのに、会計で金額が増えていた、という場面です。
これは説明が誤っていたわけではないことがほとんどです。税の話と、項目の話が別だからです。表示されている施術の代金が税込みであっても、その日に受けた別の項目は、そもそも表示価格に入っていません。
| 会計で金額が動く理由 | 税の話か、項目の話か |
|---|---|
| 表示価格が税別だった | 税の話です |
| 麻酔が別の項目として加算された | 項目の話です |
| 施術後のケアを追加した | 項目の話です |
| 処方された薬の代金が乗った | 項目の話です |
| 範囲や量が当日の相談で増えた | 項目の話です |
| 施術を一つ追加した | 項目の話です |
表を見ていただくと分かるとおり、動く理由のほとんどは税ではなく項目です。「免税」という言葉に気を取られていると、こちらを確認しそこねます。カウンセリングの最後に「今日の支払いは、この明細で全部ですか」と一言たずねてください。税と項目の両方を、その一言で確認できます。
現地でそのまま使える、確認の言い回し
読むだけでなく、こちらから聞くときの言い方もそろえておくと安心です。日本語が通じる場合はそのまま日本語で、通じにくい場合は画面に表示して見せる形で使えます。
- この金額は付加価値税を含みますか(이 금액은 부가세가 포함되어 있나요?)
- 今日の支払いは、この明細で全部ですか(오늘 결제는 이 내역이 전부인가요?)
- 明細書と領収書をください(명세서와 영수증 주세요)
- 追加になる項目があれば、先に教えてください(추가되는 항목이 있으면 미리 알려주세요)
四つとも、答えが「はい」か「いいえ」で返ってくる形にしてあります。条件を尋ねる質問は、答えが一言で返る形にしておくと、言葉が完全に通じない場面でも確認が成立します。長い説明を求める聞き方にすると、通訳を挟むぶんだけ行き違いが起きやすくなります。
「免税」と書かれた案内は、日付から読んでください
日本語で書かれた韓国の美容医療の案内には、書かれた時期がはっきりしないものが少なくありません。制度があった時期に書かれたまま更新されていない記事も残っています。
読むときの順番は、次のようにしてください。
- 記事や案内が書かれた日付を探す——日付がない案内は、判断の材料としては弱いものになります
- どの制度の話をしているのかを確かめる——買い物の話なのか、医療費の課税の話なのか、還付の話なのか
- 条文の期限と照らし合わせる——還付の話であれば、条文上の期限は2025年12月31日です
この三段階で読むと、古い情報に引きずられずに済みます。三つの言葉が混ざっているとき、どう見分けるかについては皮膚科で「免税」と言われたときの区別のしかたをまとめた記事もあわせてご覧ください。
表示のしかたが店ごとに違うのは、なぜでしょうか
「なぜ全部そろえてくれないのか」と思われるかもしれません。ここには理由があります。
一つは、韓国のクリニックの価格表が、もともと現地の方に向けて作られているためです。現地では税の扱いが前提として共有されているので、いちいち注記しなくても通じます。外国から来た方が読むことを想定して書き直されているとは限りません。
もう一つは、同じクリニックでも、掲示・案内サイト・当日の見積もりで、書き方がそろっていない場合があることです。掲示は税別、見積もりは税込み、というように分かれていることもあります。どれが正しいかを推測するのではなく、当日の見積もりの数字を基準にするのがいちばん確実です。
ですので、事前に見た数字はあくまで目安として持っておき、カウンセリングで確定した見積もりの数字を最終的な基準にしてください。この順番にしておけば、表示のばらつきに振り回されずに済みます。
記録は、あとから確認するための材料になります
税の扱いについてあとから確認したくなったとき、頼りになるのは手元の記録です。明細書と領収書に加えて、次のものを残しておいてください。
- 受けた施術の名前(韓国語の表記も一緒に控えておくと照合しやすくなります)
- 価格表の写真、または見積もりの画面
- 会計の明細
- クリニックとのやりとりの記録
診断の結果や説明を、あとから見返せる形で受け取れる場合もあります。
「肌診断もメールで後からも詳しく確認できる⭕️」
その場で理解しきれなくても、あとから読み返せる形になっていれば落ち着いて確認できます。写真を一枚撮っておくだけでも、記録としては十分に働きます。
日本語では、どこまで確認できるのか
税や金額の話は、施術の説明よりも一段むずかしい話題です。単語が分かるかどうかではなく、「含む・含まない」という条件のやりとりができるかどうかが問われます。
日本語対応をうたっているクリニックでも、対応の中身には幅があります。
- 常勤の日本人スタッフや通訳がいる場合——価格表の注記から会計の明細まで、その場で確認できます
- 日本語の窓口が予約対応のみの場合——当日の会計の場では通じないことがあります
- 翻訳アプリで対応する場合——施術の説明はできても、税の扱いのような条件を詰める場面では行き違いが起きやすくなります
実際の口コミには、質問しやすい雰囲気かどうかが結果を分けている様子が表れています。
「シミ取り目的で初来院しました。日本語でカウンセリングして、質問などにも気軽に答えて頂けます。」
「気軽に答えてもらえる」という状態であれば、税の扱いのような細かい点も聞けます。逆に、聞きづらい雰囲気だと、疑問を抱えたまま会計まで進んでしまいます。
規模や設備に驚いたという声も多く見られます。
「日本のクリニックとは比べ物にならない規模の広さでびっくりしました!」
規模が大きいほど受付、カウンセリング、施術、会計を担当する人が分かれます。どの段階で日本語が通じるのかを、予約のときに聞いておくことをおすすめします。
よくある質問
Q. 渡韓して美容医療を受けると、税は戻ってきますか。
外国人観光客が美容目的の医療を受けたときの付加価値税の還付については、韓国の租税特例制限法第107条の3に定めがありますが、条文上の期限は2025年12月31日までとなっています。2026年8月31日時点で確認できる最新の条文にも延長の規定は見当たりませんので、現時点では受けられない状態です。
Q. 買い物の免税と、医療の話は同じものですか。
別のものです。根拠になる規定が違います。買い物にともなう免税や還付の条件・手続きについては、購入した店舗や空港の案内でご確認ください。
Q. 価格表に韓国語で書かれた注記が読めません。どうすればよいですか。
「부가세 포함」であれば税を含む、「부가세 별도」であれば税は別、という意味です。読めない場合は、カウンセリングの場で「この金額は付加価値税を含みますか」と聞けば確認できます。
Q. 「免税価格」と書かれた案内を見かけました。どう受け取ればよいですか。
まず、書かれた時期を確認してください。そのうえで、買い物の話なのか、医療費の課税の話なのか、外国人観光客向けの還付の話なのかを切り分けてください。判断がつかない場合は、その案内を出しているクリニックに直接お尋ねください。
Q. 治療のために受けた場合は、扱いが違いますか。
韓国では治療を目的とした医療には付加価値税がかからず、美容を目的とした施術には課税されるという分かれ方をしています。個別の施術がどちらにあたるかは、医療機関の判断によります。
※ 本記事は2026年8月31日時点で確認できた条文と表記にもとづく情報の整理であり、税務上の助言ではありません。制度や表示は変わることがあります。実際の取り扱いについては、医療機関または税務の専門家にご確認ください。