「韓国の皮膚科は免税になるらしい」——渡韓を考えている方から、いまでもよく聞く話です。そして現地の案内や日本語の記事でも、「免税」という言葉はあちこちで見かけます。
ただ、この言葉が指しているものは、実はひとつではありません。買い物のときの免税、医療そのものに税がかかるかどうかの話、そして外国人観光客に向けた還付の特例。この3つがすべて「免税」と呼ばれていて、混ざったまま伝わっています。
この記事では、その3つを韓国の法令の原文にあたって切り分けます。そのうえで、会計の前に何を確認しておけば想定外の差が出ないのかを整理しました。金額そのものは施術内容によって変わりますので、ここでは金額の決まり方と確認のしかたに絞ってお伝えします。

「免税」という言葉が、3つの意味で使われています
まず全体像を整理します。会話のなかで出てくる「免税」は、たいていこのどれかを指しています。
| 呼ばれ方 | 実際に指しているもの | 皮膚科での関係 |
|---|---|---|
| 免税(買い物) | 商品を買ったときの税の扱い | 医療とは別の制度です |
| 非課税(医療) | その医療に付加価値税がかかるかどうか | 美容を目的とした施術は課税の対象です |
| 還付(外国人観光客の特例) | いったん払った税が後から戻る仕組み | 条文上の期限が切れています |
いちばん誤解が多いのは、真ん中と下の混同です。「税がかからない」のと「払ってから戻る」のは、まったく別の話です。ひとつずつ見ていきます。
区別① 買い物の免税と、医療の話は別の制度です
空港や街なかで見かける免税の案内は、商品を買ったときの制度にもとづくものです。医療を受けたときの税の扱いは、それとは別の条文で定められています。
ここが混ざると、「買い物と同じように、空港で手続きすれば戻ってくるはず」という理解になってしまいます。実際には、医療の場合は医療機関側が発行する書類が前提になっていて、手続きの入口からして違います。
ですので、皮膚科の会計の場面で「免税になりますか」と聞いても、話がかみ合わないことがあります。聞くのであれば、「この金額は付加価値税を含んでいますか」という聞き方のほうが、確実に答えが返ってきます。
区別② 美容を目的とした施術は、課税の対象として扱われています
次に、医療そのものの扱いです。韓国では、治療を目的とした医療と、美容を目的とした施術とで、付加価値税の扱いが分かれています。
その線引きを定めているのが「付加価値税法施行令」です。第35条には、課税の対象になる施術の名前が並んでいます。

条文に並んでいる名前を見ると、皮膚科で受けることの多い施術がほぼそのまま入っていることが分かります。シミの治療、ニキビの治療、毛穴の縮小、皮膚の再生、皮膚の美白、抗老化。日本語で「肌管理」と呼ばれている内容の多くが、ここに含まれています。
つまり、美容目的で皮膚科に行く場合、「税がかからないから安い」という前提は成り立ちません。課税される前提で価格が組まれています。どの施術が条文のどこに並んでいるのかは免税の対象だった施術の一覧で、韓国語の条文用語と日本でよく使う施術名を対応させて整理しました。
なお、同じ第35条には手術をともなう施術も別の項目として並んでいます。皮膚科で受ける施術とは条文上の位置が違いますので、案内を読むときは自分が受けるものがどちらの話なのかを見ておいてください。
区別③ 外国人観光客向けの還付は、条文上の期限が切れています
3つ目が、いちばん多く語られている「免税」です。外国人観光客が韓国で美容目的の医療を受けた場合に、払った付加価値税が後から戻る、という特例が定められていました。
根拠になっているのは「租税特例制限法」の第107条の3です。原文を確認しました。

黄色く示した部分が期限です。条文には「2025年12月31日まで」と書かれています。 2026年8月31日時点で確認できる最新の条文にも、この日付がそのまま残っていました。
ここで大事なのは、「廃止された」と言い切るのも正確ではない、という点です。この期限は過去に6回、繰り返し延長されてきました。2016年・2017年・2018年・2019年・2020年・2022年の改正履歴が、条文の末尾に残っています。つまり、制度そのものは条文に残っていて、適用の期限が切れたまま延長の改正が入っていない状態です。
いま渡韓する方にとっての結論は、「還付を前提に予算を組まない」ということになります。この制度の経緯と条文の読み方は免税はいつまでだったのかに、原文の画面つきで詳しくまとめています。
対象になる医療機関にも、条件がありました
もうひとつ、あまり知られていない条件があります。この特例は、どの医療機関でも対象になったわけではありません。
施行令の第109条の3には、対象になる医療機関の条件が定められていました。韓国の保健福祉部に「外国人患者を受け入れる医療機関」として登録している機関に限られる、という組み立てです。この登録は誰でも自動的に持っているものではなく、要件を満たして手続きをした医療機関だけが持っています。
そして、この登録があるかどうかは、いまでも韓国の公式サイトで誰でも無料で確認できます。 制度の期限とは関係なく、外国人患者の受け入れ体制を見るときの材料になります。調べ方は受け入れ登録を確認する方法に画面つきで書きました。
登録から分かることと、分からないことも整理しておきます。
| 分かること | 分からないこと |
|---|---|
| 外国人患者の受け入れ登録があるかどうか | 施術の質や技術の高さ |
| 登録の状態が有効かどうか | 日本語がどこまで通じるか |
| 機関の名前と種別 | 価格が適正かどうか |
登録は「外国人の受け入れについて手続きを済ませている」という事実を示すもので、それ以上のことは示しません。ただ、確認に数分しかかからない材料としては、見ておく価値があります。
そもそも、皮膚科の金額は何で決まっているのか
還付を前提にできない以上、価格は「表示された数字をそのまま受け取る」のではなく、何によって動く数字なのかを知って読むことになります。皮膚科の会計でずれが出るのは、たいてい次のどれかを見落としているときです。
| 金額を動かす条件 | 具体的に何が変わるか |
|---|---|
| 施術の種類 | 同じ悩みでも、選ぶ施術によって組み立てが変わります |
| 回数 | 1回あたりの金額と、複数回をまとめたときの金額は別に案内されることがあります |
| 部位と範囲 | 顔全体なのか、一部だけなのかで変わります |
| 照射数・薬剤量 | 同じ施術名でも、当日どれだけ使うかで変わります |
| 初回かどうか | 初めて受ける方に向けた価格が設定されていることがあります |
| 税込みか税別か | 表示の慣行が医療機関によって違います |
このうち、日本から情報を集めている段階で確定できるものは、ほとんどありません。同じ施術名でも、部位や量が違えば別の金額になるからです。ですので、事前に調べるべきなのは「いくらか」ではなく、「何を聞けば金額が確定するか」のほうになります。
もうひとつ気をつけたいのが、カウンセリングで内容が変わるという前提です。事前に見ていたメニューと、実際に肌を見たうえで提案される内容は、一致しないことがあります。そのときに金額も動きます。だからこそ、次の4つの質問が効いてきます。
会計の前に確認する4つのこと
ここからが実務です。制度に頼れない以上、価格の確認を自分でやることになります。カウンセリングの場で聞いておきたいことを、順番に並べます。
- この金額は付加価値税を含みますか——韓国の価格表示は、税込みのところと税別のところが混在しています。ここを最初に確認します
- 今日の合計はいくらになりますか——施術ごとの単価ではなく、当日払う総額を先に出してもらいます
- 麻酔やアフターケアの薬は、この金額に入っていますか——別立てになっていることがあります
- 次回以降も同じ金額ですか——初回価格が設定されている場合、2回目からの金額が変わります
とくに1と4は、あとから差が出やすいところです。初回価格は初めて受ける方に向けた案内であることが多く、続けて通う前提で考えている場合は、2回目以降の金額まで聞いておくと計画が立てやすくなります。
そして、この4つは施術を受けると決める前に聞いてください。受けると決めたあとで内訳を確認しようとすると、時間の都合で「では今日はこれで」となりがちです。順番としては、提案を聞く、金額を確認する、そこで一度止まる、決める。この4段目の前に確認を挟めるかどうかで、会計での納得感が変わります。
還付を前提に予算を組んでいた方は、その分を差し引いて組み直すことになります。組み直すときは、受ける施術を減らすのか、回数を減らすのか、次回に回すのかを先に決めておくと、現地で迷いません。
実際の口コミにも、予算を先に伝えたことで話が進んだ様子が残っています。
「とてもきれいなクリニックです。日本語の通訳さんと一緒にカウンセリングしてくれて、納得のいく施術を選んでくれます。予算オーバーと伝えたら予算に合うよう提案してくれました。」
「すごくきれい。日本語ができるスタッフが通訳して施術を決められます。変な押売りもないし、むしろ、これがしたい。と言ったら、あなたにはこっちの方がいいと、安い方を勧められたので、ちゃんと肌を見て診断してくれている感じがしました。」
予算を伝えるのは遠慮することではなく、提案の精度を上げるための情報提供だと考えていただくと、話が早くなります。支払いの手段や領収書の受け取り方は支払い方法にまとめています。
「免税」と書かれた案内を見かけたときの読み方
日本語で書かれた案内記事のなかには、制度があった時期に書かれたまま更新されていないものが残っています。読むときは、次の3点を見てください。
- 書かれた日付——2025年より前に書かれたものは、いまの状況と違う可能性があります
- 根拠が書かれているか——条文名や出典が示されているか。「〜らしい」で終わっていないか
- 医療の話か、買い物の話か——両方を混ぜて説明している記事は、どちらの制度の話なのかが曖昧になっています
現地の案内についても同じです。「免税」という言葉が出てきたら、何が免税なのかを一度確認する。それだけで行き違いはかなり減ります。
聞き方としては、「免税になりますか」ではなく、「いま提示していただいた金額から、あとで変わる要素はありますか」と尋ねるほうが実用的です。免税という言葉を使わずに聞けば、税の扱いも、追加の費用も、初回価格の条件も、まとめて答えが返ってきます。答えが「変わりません」であれば、その金額が当日払う額だと考えて差し支えありません。
キャンペーン価格の案内についても、同じ読み方が使えます。
「とても広くて人が多いので最初は驚きましたが、カウンセリングからみなさんとても丁寧で緊張しましたがここに来て良かったと思います。キャンペーンのメニューが特に安くて、美容クリニック初心者の方にも勧められます。」
キャンペーン価格が税込みなのか税別なのか、回数の条件があるのかは、案内の文面だけでは分からないことがあります。ここも確認の対象です。
日本語では、どこまで確認できるのか
税や金額の話は、施術の説明よりも一段むずかしい話題です。日本語対応をうたっている医療機関でも、対応の中身には幅があります。
| 対応の形 | 費用の話が、どこまで通じるか |
|---|---|
| 常勤の日本語スタッフや通訳がいる | 内訳や税の扱いまで、その場で確認できます |
| 予約対応だけ日本語 | 当日の会計の場では通じないことがあります |
| 翻訳アプリで対応 | 施術の説明はできても、金額の条件を詰める場面では行き違いが起きやすくなります |
予約の段階で送っておく質問としては、「会計のときも日本語で確認できますか」が効率的です。この一言への答え方で、日本語対応がどの段階までのものかが見えてきます。
「(前略)日本語完璧で、内容にも詳しくて丁寧に説明してもらえて、すごくよかったです。」
費用にかかわる話は、あとから取り返しがつきません。金額の内訳を日本語で確認できる体制があるかどうかは、施術のうまさと同じくらい、渡韓の満足度を左右します。
よくある質問
Q. 2026年に渡韓した場合、皮膚科の治療費は免税になりますか。
外国人観光客向けの還付特例については、条文上の期限が2025年12月31日となっており、2026年8月31日時点で確認できる最新の条文にも延長の規定は見当たりません。したがって、この制度による還付は受けられない状態です。また、美容を目的とした施術は付加価値税法施行令上、課税の対象として扱われています。
Q. 美容皮膚科の施術は、そもそも非課税ではないのですか。
韓国では、治療を目的とした医療と美容を目的とした施術で扱いが分かれています。付加価値税法施行令第35条には、シミ治療術・ニキビ治療術・毛穴縮小術・皮膚再生術・皮膚美白術・抗老化治療術などが並んでおり、これらは課税の対象として扱われています。
Q. 価格表に税込みか税別かが書かれていない場合は、どうすればよいですか。
カウンセリングの場で「この金額は付加価値税を含みますか」と直接確認してください。表示の慣行は医療機関によって違いがあり、書かれていないことも珍しくありません。総額で提示してもらうのが確実です。
Q. 空港で医療費の還付手続きはできますか。
医療を受けた場合の還付は、買い物の免税とは別の条文にもとづく制度でした。施行令では医療機関が発行する医療用役供給確認書を還付窓口の事業者に提出する仕組みとされており、入口が異なります。なお、現在は条文上の期限が切れた状態です。
Q. 領収書はもらっておいたほうがよいですか。
はい。金額の内訳が記載された明細を受け取っておくと、帰国後に内容を見返すことができます。複数回に分けて通う場合や、次回以降の金額を比べたい場合にも役立ちます。
この記事の情報源
この記事の内容は、韓国の国家法令情報センターで公開されている法令の原文を直接確認して書いています。掲載した画像は、いずれもその原文の画面です。
- 付加価値税法施行令 第35条/2026年2月27日施行版
- 租税特例制限法 第107条の3/2026年6月2日施行版
- 租税特例制限法施行令 第109条の3/2026年7月1日施行版
※ 本記事は2026年8月31日時点で確認できた条文にもとづく情報の整理であり、税務上の助言ではありません。制度は改正される場合があります。実際の手続きや個別の判断については、医療機関または税務の専門家にご確認ください。