韓国のクリニックを調べていると、「皮膚科」と書かれているところと、「美容皮膚科」と紹介されているところが混ざって出てきます。日本語のまとめ記事では同じもののように扱われていることが多いのですが、韓国の現地では、この2つはかなり違う意味を持っています。
そして実は、韓国では看板の書き方を見るだけで、その院長が皮膚科の専門医かどうかが分かるようになっています。 これは韓国の法令で表示の仕方が決められているためで、知っていると現地でクリニックを選ぶときの判断材料になります。
このページでは、韓国の診療科の区分と、保険診療と自由診療の線引きを整理しました。日本語が通じるかどうかについては別のページで詳しくお伝えしていますので、ここでは制度の話を中心にお話しします。
結論を先にお伝えします
長くなりますので、先に要点だけまとめます。
- 韓国の制度上、「美容皮膚科」という診療科は存在しません。 正式な診療科の名前は「皮膚科」までです。
- 看板に「◯◯피부과의원(皮膚科医院)」と書けるのは、院長が皮膚科の専門医の場合だけです。
- 専門医でない場合は「◯◯의원(医院)」となり、別に「진료과목:피부과(診療科目:皮膚科)」と小さく表示されます。
- 日本人の短期滞在者には、韓国の健康保険は使えません。 ですので受ける施術がどれであっても、支払いは全額自己負担になります。
- それでも保険診療と自由診療の区別を知っておく意味はあります。そのクリニックが「治療寄り」か「美容寄り」かを読み取れるからです。
ここから、ひとつずつ見ていきます。
韓国の看板ルールは法令で決まっています
韓国の医療機関の名前の付け方は、医療法とその施行規則で細かく決められています。日本から見ると意外なほど厳密です。
「◯◯피부과의원」と書ける場合
医療法施行規則の第40条第4号には、医院などの開設者が専門医である場合に限って、その医療機関の固有名称の前に専門科目と専門医を並べて表示するか、固有名称と医療機関の種類名称の間に認められた専門科目を挿入して表示できる、という趣旨が定められています。
つまり「고유명칭(固有名称)+피부과(皮膚科)+의원(医院)」という並びの看板は、院長が皮膚科の専門医であることを示しています。
「◯◯의원 진료과목:피부과」になる場合
では、皮膚科の専門医ではない医師が肌の施術を行うクリニックはどうなるのかというと、名称に「피부과」を入れることができません。看板は「◯◯의원(医院)」となります。
そのうえで、実際に扱っている診療科目を別に表示することになります。施行規則の第41条第4項では、診療科目の表示板には「진료과목(診療科目)」という文字と診療科目の名称を表示しなければならない、と定められています。
さらに第42条では、名称の表示板に診療科目を一緒に表示する場合、診療科目の文字の大きさを医療機関の名称の文字の大きさの2分の1以内にしなければならないと決められています。
「診療科目:皮膚科」という表示が、店名より明らかに小さい文字で書かれているのを見かけるのは、このルールがあるためです。
見分け方をまとめると
| 看板の書き方 | 意味すること |
|---|---|
| ◯◯피부과의원(◯◯皮膚科医院) | 院長が皮膚科の専門医です |
| ◯◯의원+진료과목:피부과(小さい文字) | 院長は皮膚科の専門医ではありません |
| ◯◯의원のみ | 診療科目の表示を別途確認してください |
現地でビルの看板を見上げたとき、この違いが読めるとかなり見え方が変わると思います。
専門医でないから悪い、という話ではありません
ここは誤解のないようにお伝えしたいところです。
韓国では、医師免許を持っていれば、専門科目にかかわらず美容目的の施術を行うことができます。ですので「専門医ではない医師のクリニック=質が低い」という単純な話にはなりません。実際に、肌管理やレーザーの施術を数多く手がけて評価を得ているクリニックはたくさんあります。
大事なのは、「皮膚科」という言葉が持つ重みが日本と韓国で違うことを知っておくことです。日本語のまとめ記事で「皮膚科」と紹介されていても、現地の看板では「診療科目:皮膚科」の表示だった、ということは普通に起こります。
ご自身が「皮膚疾患の専門医に診てほしい」と考えているのか、それとも「肌管理をきれいに仕上げてほしい」と考えているのか。目的によって、この違いが重要になったりならなかったりします。
「美容皮膚科」は制度上の診療科ではありません
ここが、日本の方がいちばん驚かれるところかもしれません。
韓国の医療法施行規則の第41条第1項には、医院が表示できる診療科目が具体的に列挙されています。内科、神経科、外科、産婦人科、小児青少年科、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、泌尿器科、リハビリテーション医学科、家庭医学科などが並んでいます。
この一覧の中に、「美容皮膚科」という科目は含まれていません。
つまり「美容皮膚科」は、法令で定められた診療科の名前ではなく、実務上の呼び名ということになります。肌管理や美容目的の施術を中心に扱っているクリニックを、分かりやすく指すための言葉として広く使われている、と捉えていただくのが正確です。
ですので、日本語のサイトで「美容皮膚科」と書かれていても、それがどこまでの体制を指しているかは表記からは分かりません。実際に何を扱っているかは、そのクリニックの施術メニューを見て判断するほうが確実です。
保険診療と自由診療の線引き
もうひとつの軸が、保険が効くかどうかという話です。
韓国の健康保険は、日本人観光客には使えません
まず前提として、韓国の国民健康保険は加入者を対象とした制度です。旅行や短期滞在で訪れる日本人は加入者にあたりませんので、韓国のクリニックで受ける診療は、内容にかかわらず全額自己負担になります。
「保険が効く治療なら安く受けられるのでは」と考えたくなるところですが、渡韓して受ける場合、その前提は成り立ちません。ここは最初に押さえておいていただきたいところです。
なお、日本の健康保険には海外で受けた治療について後から一部の払い戻しを受けられる仕組みがありますが、美容目的の施術は対象外とされています。 ご自身が加入されている保険者によって取り扱いが異なりますので、必要な方は渡韓前に加入先へご確認ください。
それでも区別を知っておく意味があります
では保険診療と自由診療の区別を知る意味はないのかというと、そうでもありません。そのクリニックがどちらの性格を持っているかを読み取る手がかりになります。
韓国でも、健康保険が適用される診療とされない診療の線引きは日本と似た考え方をしています。おおまかに言えば、次のような分かれ方です。
| 保険が適用されうる領域 | 保険が適用されない領域 | |
|---|---|---|
| 目的 | 病気やけがの治療 | 見た目を整える美容目的 |
| 具体例 | アトピー性皮膚炎、じんましん、水虫、いぼ、円形脱毛症、重いニキビの治療など | 肌管理、シミ・くすみの改善、しわ取り、リフトアップ、輪郭の調整など |
| 韓国での呼ばれ方 | 급여(給付) | 비급여(非給付) |
渡韓して受ける施術のほとんどは、右側の「美容目的」に入ります。水光注射、リジュラン、ジュベルック、ポテンツァ、ハイフ、糸リフト、ピコトーニング、ララピール、インモード、オンダリフト、ボトックス、ヒアルロン酸、小顔注射。いずれも美容目的の自由診療です。ダウンタイムの出方も施術ごとに違いますので、旅程を組む前にカウンセリングで確認しておいてください。
この分類が役に立つのは、「治療も相談したい」ときです。 肌荒れやニキビが気になっていて、原因から診てもらいたいという場合は、治療を日常的に扱っているクリニックのほうが話が早いことがあります。逆に、受けたい施術がすでに決まっていて仕上がりを重視したいのであれば、その施術の症例数が多いクリニックを選ぶほうが結果につながります。
医院・病院・総合病院の違い
もうひとつ、韓国の医療機関には規模による区分があります。日本語で「病院」と訳されていても、韓国では意味が違いますので簡単に触れておきます。
医療法の第3条では、医療機関を次のように区分しています。
- 의원급(医院級):主に外来の患者を対象とする医療機関で、의원(医院)、치과의원(歯科医院)、한의원(韓医院)が含まれます。
- 병원급(病院級):主に入院の患者を対象とする医療機関で、병원(病院)、한방병원、요양병원、정신병원、종합병원(総合病院)などが含まれます。
そして第3条の2では、병원・한방병원については30床以上の病床を備えなければならないと定められています。
渡韓して肌管理や美容目的の施術を受ける場合、訪れるところはほぼ「의원(医院)」にあたります。名前に「병원」と付いていないからといって規模が小さく設備が劣る、という意味ではありません。外来中心の医療機関という区分を示しているだけとお考えください。
では、どちらに行くべきか
ここまでを踏まえて、目的別に整理します。
| あなたの目的 | 向いている選び方 |
|---|---|
| 肌荒れやニキビの原因から診てほしい | 皮膚科の専門医が院長のクリニック。看板が「◯◯피부과의원」の形になっているところ |
| 受けたい施術が決まっている(ポテンツァ、ハイフなど) | その施術の症例数と、機器を実際に置いているかを重視 |
| 何を受ければいいか分からない | カウンセリングに時間をかけてくれるところ。提案の理由を説明してくれるか |
| 旅程が短く、とにかく効率よく受けたい | 予約から会計までの流れが整っているところ。ただし説明の丁寧さは落とさない |
| 肌が敏感で、トラブルが心配 | 事前に肌の状態を伝えて、返答が具体的かどうかで判断 |
ひとつ付け加えておきたいのは、専門医かどうかだけで決めないでいただきたいということです。実際の満足度を左右しているのは、症例数、機器の設定、そして説明の丁寧さであることが多いように見えます。
無理に足し算をしてこない、というのも大事な要素です。
「カウンセラーの方もとてもやさしく、正直に今の自分に本当に必要な施術をアドバイスしてくれます。無理な勧誘が一切ないのも好印象でした。」
「スタッフの皆さんがすごく丁寧かつ、一人一人に合った施術を提案して下さります。無理に施術を勧めたりしませんし、相談しながら満足いく施術を受けることができました。」
逆に、その場でどんどん追加されて予算を超えてしまったという声も残っています。
「これやるなら、これも足さないと意味ないと言われてどんどん高くなって予定してた金額より倍以上になってしまった」
専門医かどうかという制度の話と、この「提案の仕方」はまったく別の軸です。両方を見ていただくのがいちばん確実だと思います。
日本語について
制度の話が中心のページですので、ここは要点だけお伝えします。
診療科の区分と日本語対応の厚さには、直接の関係はありません。 皮膚科の専門医が院長のクリニックだから日本語が通じる、ということはありませんし、その逆もありません。日本語の体制は、そのクリニックが外国人の来院をどれだけ受けてきたかによって決まっています。
ですので、専門医かどうかで絞り込んだあとに、日本語で相談できるかを別に確認していただく形になります。予約のメッセージで、次の2つを日本語で送ってみてください。
- カウンセリングは日本語で受けられますか。通訳の方は同席していただけますか。
- 私は◯◯(肌の悩み)が気になっていますが、そちらで相談できますか。
2番目の答えが具体的に返ってくるかどうかは、そのクリニックがその悩みを日常的に扱っているかの目安になります。テンプレートのような返事しか来ない場合は、別のところにも問い合わせてみるのが安全です。
なお、通訳の方が常駐していないクリニックもあります。曜日や時間帯によって対応できる方がいないこともありますので、「日本語対応あり」と書かれていても、自分が行く時間帯に対応できるかまで確認しておくと確実です。
予約前に確認しておきたいこと
- 看板の表記が「◯◯피부과의원」なのか、「진료과목:피부과」なのかを公式サイトの写真などで確認したか
- 自分の目的が「治療」なのか「美容」なのかを、先に言葉にしたか
- 受けたい施術の機器が、そのクリニックに実際にあるかを確認したか
- 支払いは全額自己負担になる前提で、予算の上限を決めたか
- カウンセリングの時点で総額が確定するかを聞いたか
- 自分が行く時間帯に日本語対応の方がいるかを確認したか
まとめ
- 韓国では、看板に「피부과(皮膚科)」を名称として入れられるのは院長が皮膚科の専門医の場合だけで、そうでない場合は「진료과목:피부과」と名称の2分の1以内の文字で表示されます(医療法施行規則第40条・第41条・第42条)。
- 「美容皮膚科」は法令上の診療科ではなく、実務上の呼び名です。制度上の科目は「皮膚科」までになります。
- 日本人の短期滞在者に韓国の健康保険は使えませんので、施術の内容にかかわらず全額自己負担になります。
- それでも保険診療と自由診療の区別は、そのクリニックが治療寄りか美容寄りかを読む手がかりになります。
- 渡韓して受ける美容目的の施術は、ほぼすべてが自由診療にあたります。
- 専門医かどうかだけで決めず、症例数・機器・説明の丁寧さを合わせて見ていただくのが確実です。
制度を知っておくと、現地で看板を見上げたときや、日本語のまとめ記事を読むときの解像度が上がります。そのうえで、最後に効いてくるのは「自分の悩みを丁寧に聞いて、理由を説明してくれるかどうか」です。そこはぜひカウンセリングでご自身の目で確かめていただければと思います。
なお、法令の内容は改正されることがあります。ここでお伝えした条文は医療法および医療法施行規則によるものですが、最新の内容についてはご自身でもご確認いただければと思います。また、引用した声は個人の感想であり、感じ方には個人差があります。