「渡韓して美容医療を受けるときの免税手続きは、どうやればよいのでしょうか」——このように調べはじめると、聞き慣れない書類の名前や期限が出てきて、一気に複雑に見えてきます。自分で何かを申請しなければならないのか、空港で並ぶ必要があるのか、書類はどこでもらうのか。準備することが多そうに思えて、そこで止まってしまう方が少なくありません。
先に結論を書きます。この手続きは、三つの当事者が分担して動く仕組みでした。そして、そのなかで本人がする作業は一つだけでした。全体像さえ分かってしまえば、複雑なものではありません。
もう一つ、あわせてお伝えしなければならないことがあります。この手続きの根拠となる条文の期限は、2025年12月31日で切れています。 2026年8月31日時点で確認できる最新の条文にも、それ以上の延長の規定は見当たりません。ですのでこの記事では、条文が定めていた手順を原文で確認したうえで、いま渡韓する方が代わりに何をしておけばよいのかまでを整理します。

「手続き」と呼ばれていたものは、三者が動く仕組みでした
書類の名前から入ると分かりにくいので、まず登場人物から整理します。
| 当事者 | 果たしていた役割 |
|---|---|
| 医療機関 | 医療を提供し、確認書を発行して、還付の窓口となる事業者に電子的に送る |
| 還付窓口の事業者 | 確認書と本人からの提出を突き合わせ、還付を行う |
| 本人(渡韓した方) | 医療を受けた日から3か月以内に、確認書を還付窓口の事業者に提出する |
この表を見ていただくと分かるとおり、書類を作るのも、送るのも、医療機関の側の仕事でした。本人が用意して作成する書類があったわけではありません。ここが誤解されやすい点で、「自分で書類を書いて申請するもの」だと思って身構えてしまうと、実際より難しく見えてしまいます。
条文が定めていた手順(施行令の原文)
細かい条件は、租税特例制限法施行令の第109条の3に定められていました。原文を確認しました。

条文から読み取れる流れを、順番に並べます。
- 登録された医療機関で、対象となる医療を受ける——どの医療機関でもよかったわけではありません
- 医療機関が「医療用役供給確認書」を発行する——この書類の名前が、検索でよく出てくるものです
- 医療機関が、その確認書を還付窓口の事業者に電子的に送る
- 本人が、医療を受けた日から3か月以内に、確認書を還付窓口の事業者に提出する
- 還付が行われる
1から3までは医療機関の側で完結します。本人が動くのは4だけでした。条文の全体的な組み立てと、それぞれの条項の位置づけについては、還付の流れを条文にそって整理した記事により詳しくまとめています。
本人がする作業は、実は一つだけでした
もう一度、はっきり書きます。本人がする作業は「受け取った確認書を、期限内に還付窓口の事業者に提出する」ことだけでした。
そして、この一つの作業にだけ期限がついていました。医療を受けた日から3か月以内です。逆にいえば、この期限を過ぎてしまうと、他の条件をすべて満たしていても手続きが完了しないという組み立てになっていました。
ここから分かることがあります。制度が動いていた時期であっても、手続きが成立するかどうかは、最初の一歩の段階でほぼ決まっていたということです。受けた医療機関が対象に入っているかどうか、確認書が発行されるかどうか。ここが満たされていなければ、あとから本人がどれだけ動いても手続きは始まりません。
手続きの入口には、条件がありました
その最初の一歩というのが、医療機関の条件です。条文では、医療海外進出および外国人患者誘致支援に関する法律にもとづいて登録した医療機関で受けたものが対象とされていました。
登録の有無は、いまでも韓国の公式サイトで誰でも無料で確認できます。

この確認は、還付とは切り離しても意味があります。外国人の患者を受け入れる体制について届け出がされているかどうかが分かるからです。調べ方の手順は登録を確認する方法を画面つきで説明した記事に載せています。
もう一つの条件が、受けた医療の中身です。条文では「付加価値税が免除されない医療」、つまり美容を目的として課税の対象になる施術が対象とされていました。韓国では治療を目的とした医療には付加価値税がかからず、美容を目的とした施術には課税されます。この課税される分について還付する、という組み立てでした。
いま、この手続きは発生しません
ここまで手順を整理してきましたが、現時点でこの手続きが動くわけではありません。租税特例制限法第107条の3の条文には期限が定められており、条文上の期限は2025年12月31日です。2026年8月31日時点で確認できる最新の条文にも、延長の規定は見当たりません。
正確に言えば、条文そのものは法律に残っています。削除されたのではなく、適用の期限が切れたまま延長の改正が入っていない状態です。この制度は過去に複数回、期限が来るたびに延長されてきた経緯があるものですので、今後どうなるかは現時点では分かりません。
ですので、いま渡韓する方が「免税手続き」として何かを準備する必要はありません。準備が要らないという意味では、話はむしろ簡単になっています。
代わりに、当日やっておく「記録の手続き」
とはいえ、何も残さなくてよいということではありません。制度による手続きがない分、自分の手元に記録を残す作業が大事になります。次の書類を、その日のうちにそろえてください。
| 残すもの | 受け取る場面 | 何のために使うか |
|---|---|---|
| 見積もり(確定した内容と総額) | カウンセリングの終わり | 会計の明細と突き合わせるため |
| 明細書 | 会計のとき | 何にいくらかかったのかを確認するため |
| 領収書 | 会計のとき | 支払いの記録として |
| 施術名の記録(韓国語の表記も) | カウンセリングまたは会計 | 次回の相談と、日本で相談する場合のため |
| 処方された薬の名前 | 受け取るとき | 帰国後に確認が必要になった場合のため |
| 施術前後の写真 | ご自身で撮影 | 経過を見るため |
紙で受け取ったものは、その場でスマートフォンの写真に残しておくことをおすすめします。旅行中は荷物が動きますので、紙だけに頼らないほうが確実です。
この記録は、次に渡韓するときの見積もりにもそのまま使えます。 渡韓を重ねている方が金額や内容で迷わないのは、この記録を持っているからです。支払いがどの場面で発生し、手段によって何が記録に残るのかは、支払いのタイミングを場面ごとに整理した記事にまとめています。
実際の口コミを読んでいると、複数の施術を組み合わせて受ける方が多いことが分かります。
「色々と組み合わせて施術をしても、待ち時間も少なくてスムーズに対応してくれるのでとても助かります。」
組み合わせて受けた日ほど、明細の項目は増えます。あとから「どれがいくらだったのか」を思い出すのはむずかしくなりますので、その日のうちに記録しておいてください。
手続きが実際より複雑に見えていた理由
調べていて難しく感じた方は多いと思います。理由は三つあります。
一つめは、登場する言葉が耳慣れないことです。「医療用役供給確認書」も「還付窓口の事業者」も、日常で使う言葉ではありません。名前だけを先に見ると、それぞれが大きな手続きのように感じられます。実際には、前者は医療機関が出す一枚の書類、後者は還付を扱う窓口のことでした。
二つめは、誰の作業なのかが書かれていない案内が多いことです。手順だけが並んでいると、全部を自分でやるように読めてしまいます。先ほどの表のように担当を分けて並べると、本人の作業は一つだけだと分かります。
三つめは、買い物の手続きと混ざっていることです。同じ「免税」という言葉で説明されているため、空港で並ぶ場面の話と、医療機関で書類を受け取る話が一つの記事のなかで混ざっていることがあります。
この三つを分けて読むと、条文の組み立てはむしろ単純です。書類を出す人、受け取る人、届ける人が決まっていて、期限が一つある。それだけの仕組みでした。
今後、延長された場合にそなえて見ておくこと
この制度は、期限が来るたびに改正で延長されてきた経緯があるものです。今後どうなるかは現時点では分かりませんが、もし延長された場合にそなえて、いまの段階で見ておけることを挙げておきます。
| いま見ておけること | どこで確認できるか |
|---|---|
| 行こうとしている医療機関が登録されているか | 韓国の公式サイトで無料で確認できます |
| 受ける施術が課税の対象にあたるか | 韓国の付加価値税法施行令に施術名が並んでいます |
| 表示価格に付加価値税が含まれているか | クリニックの価格表と、カウンセリングでの確認 |
| 会計のときに書類を受け取れるか | 予約の段階で聞いておけます |
四つとも、制度があるかどうかに関係なく確認しておいて損のないものばかりです。制度を待つのではなく、いま自分で確認できることを済ませておくという順番でお考えください。
空港での買い物の手続きと混ざりやすい理由
「免税手続き」という言葉で調べたときに、買い物に関する案内が出てくることがあります。ここが混ざりやすいところです。
買い物にともなう免税や還付は、医療とは別の制度にもとづくものです。条件や手続きについては、購入した店舗や空港の案内でご確認ください。この記事で扱っているのは、医療を受けた場合の付加価値税の還付についての規定です。
見分け方は簡単です。書類の名前を見てください。 医療のほうの手続きで登場するのは「医療用役供給確認書」という書類で、これは医療機関が発行するものです。買い物の案内にこの書類の名前は出てきません。案内文にどの言葉が使われているかで、どちらの話をしているのかが判別できます。
「免税」と書かれた案内の読み分けについては、案内文の見分け方をまとめた記事もあわせてご覧ください。
「手続き」を探していた方が、実際に必要なこと
ここまでを踏まえると、いま渡韓する方にとって必要なのは、申請の手続きではなく確認の手続きです。順番に並べると、次の三つになります。
- 予約の前に——行こうとしている医療機関が、外国人患者の受け入れ登録をしているかを確認する
- カウンセリングで——今日受ける内容と総額、そして表示価格に付加価値税が含まれるかを確認する
- 会計で——明細書と領収書を受け取り、その場で写真に残す
三つとも、数分で終わります。制度による手続きがあった時期には、これに加えて確認書のやりとりがありました。いまはその部分がなくなり、自分の記録を整えることだけが残っているという状態です。
この三つのうち、二つめがいちばん効きます。還付があるかどうかにかかわらず、支払う金額を左右するのは「表示価格に税が含まれているかどうか」だからです。韓国のクリニックの価格表は、税込みで書いてあるところと税別で書いてあるところが混在しています。どちらが正しいという話ではなく、書き方がそろっていないというだけのことですので、その場で一言たずねてください。「この金額は付加価値税を含みますか」。この一言だけで、当日の会計でずれが出ることはほとんどなくなります。
一つめの登録の確認も、予約を決める前に済ませておくと安心です。数分で終わりますし、結果はその場で分かります。行き先が決まったら、まずここを見ておく、という順番にしておくとよいと思います。
日本語では、どこまで確認できるのか
書類や税に関する話は、施術の説明よりも一段むずかしい話題です。「何の書類か」「いつまでか」「どこに出すのか」といった条件のやりとりが必要になるためです。
日本語対応をうたっているクリニックでも、対応の中身には幅があります。
- 常勤の日本人スタッフや通訳がいる場合——見積もりの内訳から会計の明細、書類の受け取りまで、その場で確認できます
- 日本語の窓口が予約対応のみの場合——予約は日本語でできても、会計や書類の場面では通じないことがあります
- 翻訳アプリで対応する場合——施術の説明はできても、書類の名前や期限を詰める場面では行き違いが起きやすくなります
実際の口コミには、どの段階まで日本語で進められたかがよく表れています。
「また、日本語を話せるスタッフの方がいるので、カウンセリングから施術後まで安心して受けることができました。」
「カウンセリングから施術後まで」というところが大事です。書類を受け取るのは施術のあとですので、その段階で通じるかどうかが効いてきます。
「日本語も通じたので安心できました」
予約の段階で「会計と書類の受け取りのときも、日本語で確認できますか」と聞いておくことをおすすめします。この一言に対する答え方で、そのクリニックの日本語対応がどの段階までのものか、かなり分かります。
なお、次の渡韓を考えている方は、今回の記録をそろえておくと相談がとても楽になります。
「今回はこれだけでしたが、次は違うメニューでまた来たいと思います!」
このように次を考えている場合、前回の明細と施術名の記録が手元にあれば、次回は内容の相談から始められます。
よくある質問
Q. 渡韓するとき、免税手続きのために何か持っていくものはありますか。
条文上の期限は2025年12月31日までとなっており、2026年8月31日時点で確認できる最新の条文にも延長の規定は見当たりません。そのため、この手続きのために特別に準備するものはありません。パスポートは通常の本人確認のために必要になる場面があります。
Q. 「医療用役供給確認書」は、自分で書くものですか。
いいえ。条文では、医療機関が発行し、還付の窓口となる事業者に電子的に送るものとされていました。本人が作成する書類ではありません。
Q. 手続きの期限は、いつまででしたか。
条文では、医療を受けた日から3か月以内に、確認書を還付窓口の事業者に提出することとされていました。制度そのものの適用期限は、2025年12月31日までと定められています。
Q. 空港で手続きをする必要はありますか。
医療を受けた場合の還付については、条文上の期限が切れていますので、そのための手続きは発生しません。買い物にともなう免税や還付は別の制度にもとづくものですので、条件や手続きは購入した店舗や空港の案内でご確認ください。
Q. いま渡韓する場合、当日にいちばん気をつけることは何ですか。
会計の場で、明細書と領収書を必ず受け取ることです。あわせて、受けた施術の名前を韓国語の表記も含めて控えておいてください。この二つがあれば、あとから確認が必要になったときにも、次に渡韓するときにも役立ちます。
※ 本記事は2026年8月31日時点で確認できた条文にもとづく情報の整理であり、税務上の助言ではありません。制度は改正される場合があります。実際の手続きや個別の判断については、医療機関または税務の専門家にご確認ください。