「韓国の美容皮膚科は免税になるのですか」——渡韓の相談で、いまでもよく聞かれることのひとつです。ところが実際に調べはじめると、書いてあることが噛み合いません。「還付はもう終わりました」という記事があり、「免税価格でご案内します」という案内があり、料金表には「付加価値税別途」と書かれている。どれも嘘をついているわけではないのに、並べて読むと話が合わなくなります。
理由はわりと単純です。同じ「免税」という一言が、別々の三つのことを指して使われているからです。 ひとつは韓国の法律に定めがあった付加価値税の還付、ひとつは料金表の金額に税が含まれているかどうかという表示の問題、そしてもうひとつは外国人向けの割引を「免税価格」と呼んでいるだけの案内です。
この記事では、その三つを分けて整理します。金額そのものは書きません。施術の種類・回数・部位・使う薬剤の量で総額はいくらでも動きますので、こちらで数字を出しても当てになりません。代わりに、目の前の案内がどれを指しているのかを見分ける手順と、カウンセリングで何をどう聞けばよいのかをまとめます。

「免税」という一言が、三つの別のものを指しています
まず全体像です。次の三つは、根拠も、影響する金額も、確認する相手も違います。ここを混ぜたまま話すと、カウンセリングの場でかならず行き違いが起きます。
| 呼ばれ方 | 実際に指しているもの | 根拠 | いまどうなっているか |
|---|---|---|---|
| 免税・還付 | 外国人観光客が美容目的の医療を受けたときの付加価値税の還付 | 韓国の租税特例制限法の条文 | 条文上の期限は2025年12月31日で、延長の規定は確認できません |
| 免税価格・税抜き価格 | 料金表の金額に付加価値税が含まれているかどうか | 制度ではなく、各クリニックの表示のしかた | 税込みのところと税別のところが混在しています |
| 免税キャンペーン | 外国人向けの割引・セット価格 | 制度ではなく、クリニック側の販売施策 | 税とは関係がありません |
一段目だけが法律の話で、二段目と三段目は法律とは無関係です。ところが日本語の案内では、この三つがぜんぶ「免税」という一語にまとめられてしまうことがあります。まずは「いま説明されているのは、このうちのどれですか」と自分の中で分けるところから始めてください。
① 条文にあった付加価値税の還付は、期限が切れています
一段目から見ていきます。韓国には、外国人観光客が美容目的の医療を受けたときに付加価値税を還付する、という定めがありました。根拠は租税特例制限法という法律の第107条の3にあたる条文です。
冒頭に載せた画像が、その条文の原文です。黄色く示した部分に韓国語で「2025년 12월 31일까지」、日本語にすると「2025年12月31日まで」と書かれています。この日までに提供を受けた医療について還付できる、という書き方でした。
そして2026年8月31日時点で確認できる最新の条文にも、その日付がそのまま残っています。つまり、いま渡韓して美容皮膚科で施術を受けても、この制度による還付は受けられない状態です。
ただ、「廃止されました」と言い切るのも正確ではありません。この期限は2016年から2022年にかけて何度も改正され、そのたびに延ばされてきた性格のものだからです。今回は延長の改正が入っていない、という状態にとどまります。期限の推移や条文の読み方そのものは、免税はいつまでだったのかを条文で確認した記事にまとめてあります。
もうひとつ、見落とされやすい条件がありました。この還付は、どの医療機関でも受けられたわけではありません。 韓国の保健福祉部に「外国人患者の受け入れ機関」として登録している医療機関に限られていました。手続きの流れや必要だった書類についても条文に定めがありましたが、ここでは「登録している医療機関に限られていた」という一点だけ押さえておいてください。案内が食い違う原因の半分は、ここにあります。
② 表示価格が税込みか税別か — こちらは制度ではなく表示の問題です
二段目です。ここが、いまいちばん金額に効いてきます。
韓国では、治療を目的とした医療には付加価値税がかからず、美容を目的とした施術には課税されます。どの施術が美容目的として扱われるのかは、付加価値税法施行令の第35条に施術名で列挙されています。

つまり、美容皮膚科で受ける施術の多くは、そもそも課税される側にあります。そのうえで料金表の金額に税を含めて書くか、含めずに書くかは、クリニックごとの表示の慣行です。制度ではありません。
同じ「12万ウォン」という表示でも、税込みで書いているところと税別で書いているところがあり、後者は会計のときに税の分だけ増えます。ここを確認しないまま予約すると、「聞いていた金額と違う」という感想になります。実際、行き違いの相談でいちばん多いのはこのパターンです。しかも困ったことに、施術が終わってからでないと気づけません。
見分けるための言い回しを、韓国語の表記とあわせて並べておきます。料金表の端や注意書きの行に、たいてい小さく書かれています。
| 表示 | 韓国語での書かれ方 | 意味 |
|---|---|---|
| 税込み | 부가세 포함 | その金額に付加価値税が入っています |
| 税別 | 부가세 별도 | 会計のときに付加価値税が加わります |
| 記載なし | — | どちらとも書かれていません。必ず口頭で確認してください |
「記載なし」がいちばん危険です。書いていないから税込みだ、とは限りません。画面や紙に書かれていないときほど、その場で聞いてください。 表示のしかたは制度で決まっているわけではありませんので、クリニックごとに違って当たり前だと思っておいたほうが安全です。
もうひとつ、日本語の案内ページと韓国語の料金表で、書き方がそろっていないことがあります。日本語のページには金額だけが書かれていて、韓国語の料金表の下のほうに小さく「부가세 별도」と入っている、という形です。日本語だけを見て判断せず、韓国語の表記も一度見ておくと確実です。
③ 外国人向けの割引を「免税価格」と呼んでいる場合
三段目です。「外国人のお客様は免税価格でご案内します」という言い方を見かけることがあります。この場合、税の制度とは関係なく、外国人向けの割引価格やセット価格を指していることがあります。
割引そのものは悪いことではありません。問題は、それが「税が戻ってくる」と受け取られてしまうことです。税の還付だと思って受けると、あとから「戻ってこない」と感じます。最初から割引だと分かっていれば、単に「その金額でいくらか」を比べればよいだけの話になります。
区別のしかたは単純で、次の一言で足ります。
「これは税金が戻ってくるという意味ですか。それとも割引という意味ですか」
この質問に対して、はっきり「割引です」と答えてもらえれば、そこから先は金額の比較に集中できます。答えが曖昧なときは、書面か画面で総額を出してもらってください。 口頭のやりとりだけで進めないほうが安全です。
なお、キャンペーンの案内をきっかけに来院したのに、当日は別のメニューをすすめられた、という声もあります。
「キャンペーンで受けたい施術があっても色んな理由をつけて断られます。営業もかけてくるので注意した方がいいです。カウンセリングも個室ではなく仕切りがあるだけなのでおすすめできません。」
こういう受け取り方をされないためにも、案内された条件は文字で残しておくほうが、お互いにとって確実です。
クリニックによって案内が違うのは、なぜでしょうか
同じ時期に渡韓した人どうしで話が食い違うことがあります。理由はいくつか考えられます。
登録の有無が違います。 還付の対象になっていたのは、外国人患者の受け入れ登録をしている医療機関でした。登録の有無はいまでも韓国の公式サイトで誰でも確認できます。

調べ方の手順は外国人患者の受け入れ登録を確認する方法の記事に画面つきで書いてあります。予約の前に一度見ておくと、案内の前提がそろいます。
案内文が更新されていないことがあります。 制度があった時期に書かれた日本語の案内が、そのまま残っている場合があります。書かれた日付を見て、2025年より前のものであれば、いまの状況とは違う可能性があります。
そもそも指しているものが違います。 ①の還付を説明しているところ、②の税込み表示を説明しているところ、③の割引を説明しているところが、同じ「免税」という言葉で話しています。相手が悪意で違うことを言っているわけではなく、単語が同じなだけ、という場面がかなりあります。
見積もりを受け取るときに、必ず聞く三つのこと
制度が使えない状態である以上、費用の見方を切り替えたほうが安全です。聞くことは三つで足ります。
一つ目。「この金額は付加価値税を含みますか」。 これだけで②の問題は片づきます。カウンセリングの最初に聞いてください。施術内容を決めたあとに聞くと、話を戻すことになって聞きづらくなります。
二つ目。「今日払う総額はいくらになりますか」。 施術の単価だけでなく、麻酔代、施術後に処方される薬やパックの代金、再診が必要な場合の費用まで含めた数字を出してもらいます。韓国の料金表は施術ごとの単価で書かれていることが多く、当日の総額は別の数字になります。
三つ目。「この金額に変わる可能性はありますか。あるとすれば、どういうときですか」。 照射数を増やしたとき、薬剤を追加したとき、部位を足したときに金額が動くことがあります。動く条件を先に聞いておけば、施術中に増える場面でも判断できます。
三つとも、施術の内容を決める前に聞いてください。内容が決まったあとだと、金額の話に戻しづらくなります。
案内文の「書かれた時期」を見る習慣
制度まわりの情報は、書かれた時期でまるごと意味が変わります。渡韓美容の情報は日本語の記事が多く、しかも更新されないまま残りやすい分野です。
読むときは、次の順で見てください。
- その記事がいつ書かれたか(日付の表示がない記事は、それだけで扱いを一段落とします)
- 何を根拠にしているか(条文・公式サイトの画面なのか、伝聞なのか)
- こちらの条件と同じか(受けた施術・受けた時期・利用した医療機関が同じとは限りません)
体験談は貴重ですが、その方が渡韓したのが制度のあった時期であれば、いまのあなたには当てはまりません。「いつの話か」を先に見る癖をつけると、情報の食い違いにふり回されずにすみます。
会計のあとに残しておくもの
制度が使えないいまでも、記録を残しておく意味はあります。
領収書と明細をもらってください。 施術名と金額が分かれて書かれているものが理想です。あとから同じ施術を別のところで受けるとき、比べる材料になります。
受けた施術の名前を、韓国語の表記でも控えておいてください。 日本語での呼び名と韓国での正式なメニュー名がずれていることがあります。次に予約するとき、韓国語の表記があると話が早く進みます。
アフターケアの指示を、文字でもらってください。 口頭だけだと帰国後に思い出せません。翻訳アプリに通すためにも、文字で残っているほうが確実です。
どの施術が課税の対象として扱われているかを施術名で見たい方は、条文にある施術名を並べた記事を見てください。自分が受けたメニューがどちらの分類に入るのか、名前で当たりをつけられます。
三つを見分ける、簡単な順番
現場でどう判断すればよいのかを、順番にしておきます。「免税」という言葉が出てきたら、次の順で確認してください。
まず、税の話なのかを聞きます。 「これは税金が戻ってくるという意味ですか」。答えが「いいえ」なら、①の還付ではありません。②か③のどちらかです。
次に、料金表の金額に税が入っているかを聞きます。 「表示されている金額に、付加価値税は含まれていますか」。ここで②が片づきます。
最後に、その価格になる条件を聞きます。 「その価格になる条件はありますか」。回数の縛り、当日に決済することが条件、特定の曜日のみ、といった条件がついていることがあります。③はここで見えます。
三つとも、施術の内容を決める前に聞くのがこつです。内容が決まったあとだと、金額の話に戻しづらくなります。カウンセリングの最初の数分でこの三つを片づけておくと、そのあとの相談に集中できます。
そして、こちらから聞いたことにはっきりした答えが返ってこないときは、その場で決めないでください。「一度考えます」と言って出られる状態を保っておくことが、いちばん確実な自衛になります。急かされる場面ほど、いったん外に出て考える価値があります。
日本語では、どこまで確認できるのか
ここまで書いてきたことは、すべて現地で言葉が通じることが前提です。費用や税の話は、施術の説明よりも一段むずかしい話題になります。
「日本語対応」とうたっているクリニックでも、対応の中身にはかなり幅があります。整理すると、だいたい次の三段階に分かれます。
- 常勤の日本人スタッフや通訳がいる — 費用の内訳、税込みかどうか、追加が出る条件まで、その場で確認できます
- 日本語の窓口が予約対応のみ — 予約はスムーズでも、当日の会計の場では通じないことがあります
- 翻訳アプリで対応 — 施術の説明はできても、金額の条件を詰める場面では行き違いが起きやすくなります
実際に受けた方の声を読むと、この差がはっきり出ています。手続きの場面まで日本語が届いたときの安心感は、こういう書かれ方をします。
「日本人のスタッフさんが対応してくれてので、とてもスムーズに手続きできました。
施術したのはシミ取りです。レーザーは怖かったけど想像したより痛みは小さかったです。」
「日本語が通じるのでこちらのクリニックでお世話になっています。
今回はリップのアートメイクをしました。少し痛かったけど我慢できる程度でした。」
繰り返し通っている方の声にも、同じ理由が出てきます。
「3回目の利用です。旧正月にも関わらず営業してくれたので助かりました。
痛いと思っていた深い所の注射も部分麻酔の他先生もなるべく急いで痛みの軽減を計ってくれてとても良かったです。
クリニックも新店舗になりとても広くて可愛らしくて良かったです。」
一方で、費用にかかわる話はあとから取り返しがつきません。予約の段階で「会計のときも日本語で確認できますか」と一言聞いておくことをおすすめします。この質問への答え方で、そのクリニックの日本語対応がどの段階までのものか、かなり分かります。「はい、大丈夫です」だけで終わるのか、「受付にも日本語のスタッフがおります」まで返ってくるのかで、当日の見え方は変わります。
日本語対応の段階を予約前に見分ける方法は、日本語対応は何段階あるのかを整理した記事に詳しく書いてあります。
よくある質問
Q. いま韓国の美容皮膚科で施術を受けたら、免税になりますか。
条文上の期限は2025年12月31日までとなっており、2026年8月31日時点で確認できる最新の条文にも延長の規定は見当たりません。したがって、この制度による還付は受けられない状態です。「免税」と案内された場合は、税の還付なのか、税込み表示の話なのか、割引のことなのかを確認してください。
Q. 料金表に「免税価格」と書かれていました。どういう意味ですか。
書き方だけでは判断できません。付加価値税を含まない金額という意味のこともあれば、外国人向けの割引価格という意味のこともあります。「税金が戻ってくるという意味ですか、それとも割引ですか」と直接聞くのがいちばん確実です。
Q. 表示価格が税込みかどうかは、どこで分かりますか。
料金表の端や注意書きに、韓国語で「부가세 포함」(付加価値税を含む)または「부가세 별도」(付加価値税は別)と書かれていることが多いです。どちらも書かれていない場合は、必ずカウンセリングで確認してください。
Q. どの施術が課税の対象になるのですか。
韓国の付加価値税法施行令の第35条に、美容を目的とした施術が施術名で列挙されています。シミ治療術・ニキビ治療術・脱毛術・毛穴縮小術・皮膚再生術・皮膚美白術・抗老化治療術などが並んでいます。個別の施術がどちらにあたるかの判断は、医療機関が行います。
Q. 空港で買い物をしたときの免税と同じものですか。
違います。買い物の免税や還付は別の制度にもとづくものです。この記事で扱っているのは、医療を受けた場合の付加価値税の還付についての規定です。
この記事の情報源
この記事に載せた法令の画像は、韓国の国家法令情報センターで公開されている原文の画面です。登録機関の画像は、韓国保健産業振興院が運営する公式サイトの画面です。
- 租税特例制限法 第107条の3/2026年6月2日施行版
- 付加価値税法施行令 第35条/2026年2月27日施行版
- 外国人患者誘致機関の登録現況(韓国保健産業振興院)
※ 本記事は2026年8月31日時点で確認できた条文と公式画面にもとづく情報の整理であり、税務上の助言ではありません。制度は改正される場合があります。個別の手続きや金額については、医療機関または税務の専門家にご確認ください。